こんにちは。
(一財)生涯学習開発財団認定プロフェッショナル・コーチの長井です。
急に寒くなりましたね。今日は立冬です。秋も深まって。。。というのを一気に通り過ぎて冬の気配が漂い始めた感じです。お元気にお過ごしですか。
メーカーに勤務していた頃のこと。技術・製造出身の上司の一人は「品質は、現場メンバーのビリが握っている」という持論をお持ちでした。その現場メンバーのトップランナーがいくら頑張っても一番デキが悪い人が一つミスをすれば、それがその職場の品質レベルに直結するという意味です。なるほど、確かに品質は本来ミスが許されないものであり、10人いれば9人が100点をとっても、最後の一人が不合格なら、そこで品質上の問題が発生しやすいのでしょう。そして、品質やモノづくりは「きめるまもるなおすまもる」ものであるとするなら、「ちょっとぐらいいいだろう」とか「自分ひとりぐらいいいじゃないか」というような人がいれば、それが「ビリ」の人となって、そこで問題が起きるというのも、よく理解できます。
コーチング・セッションでも「決めたことを現場に徹底するにはどうすればいいのか」というテーマが出ることがあります。こういう時、クライアントの目はルールを守れない人に向きがちです。いわば、上記のビリの人の意識や行動をどうやって引き上げるかという視点です。これは至極ごもっともだと思います。全員にルールを守らせなければという思いも当然と言えますし、だからこそ、守らない人にどうやって守らせるか、という考え方も必要でしょう。
先日も安全関係の問題でそんな話になったのですが、私のクライアントはもうほとんどお手上げ状態で、どうしていいかわからない、もう彼とはわかりあえる気がしない、とおっしゃっていました。もちろん、私にもどうしたらいいのかという解はありません。
私はふと思いついて、逆に一番あなたとわかりあえている人はどんな感じなのかとたずねてみました。「ビリ」にばかり向いていた視線を「トップランナー」に向けてみようという試みです。
するとその方は、間髪入れずに自分の身近にいる人の名前をあげられました。いわばそのチームのNO.2です。その人のことを本当に頼りにしているのでしょう。そこからその人とはどんな会話をしていて、何を共有できているのか、という話を深めていきました。
たどりついたのは、トラブルの再発防止や対策、仕組みづくりなどの「HOW」についてはその人とよく会話しているが、その奥にあるものについてはあまり話し合えていないということ。いわば「何をするか」という「形」ばかりを追いかけている感じといっていいでしょうか。
もちろん生産現場ですから、作業性や効率性という現実問題はあります。対策はそれをふまえて考える必要があります。一方で、「安全は全てに優先する」という言葉を二人の間でどんなふうに共有できているのか、その精神を「自分」はどんなふうに体現できていて、相手はそれをどう受け取っているのか、相手の体現の仕方を自分はどう捉えているのだろう、という問いに至ったところで、この方はハタと立ち止まってしまわれました。
トップランナーと共有できていないことが、ビリと共有できるわけがない。
そんなことにこの方は気づかれました。
トップランナーともっと話をしなければいけない。彼の意識レベルを一段上げて、その過程で自分の意識レベルも一段上げて、そういう仲間を一人づつ増やしていくことこそが、職場全体の意識改革であり、それが「ビリ」対策でもある。そんな話で私たちはセッションを終えました。
容易ではない道のりですが、私はこのクライアントを精一杯応援していきたいと思っています。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
ここいち便りは教科書ではありません。みなさんが何かを考えたり取り組んだり話し合ったりするきっかけやヒントになればと思っております。リクエスト・異論・ご意見などなど大歓迎ですので、お気軽にお寄せいただければ誠に幸甚です。