こんにちは。
(一財)生涯学習開発財団認定プロフェッショナル・コーチの長井です。
11月もいよいよ終盤。急に寒くなりました。
忘年会や新年の行事の日程調整など、そろそろ年末年始モードに向かっている方も少なくないのではないでしょうか。まもなく師走。せわしない思いが高まってくるかと思いますが、落ち着いて日々をお過ごし頂ければと思います。
さて、「よく人の話を聞こう」というようなことをこのメルマガでも扱ってきています。今回は相手が話してくれたことは、本当の相手の思いなのだろうかということについて考えてみたいと思います。
このメルマガをお読みいただいている多くの方は、学生時代あるいは会社に入ってからもいろんな教育を受けてきて、「人のことを悪く言うのは良くないことだ」、さらには「部下のいいところを見つけて伸ばしてあげるのがいい指導だ」と教わったり考えたりしているのではないかと思います。特に最近では「褒めて伸ばす」という考え方も広まっており、そういう傾向が強まっているような気がします。
そうすると、例えば職場のメンバーの方について語る際に「彼はマジメで丁寧なんです」「人柄はとってもいいんです」「彼なりに頑張っていると思うんです」とポジティブなことを言わなければ、という観念に縛られがちです。が、どうもその言葉を額面通り受け取るのには違和感があり、その裏に何か引っかかりがあるように感じることがあります。そういうこちらが受けた感じをそのまま相手にフィードバックしてみると、「いや実はそうなんです、課題もいろいろあるんですが。。」となったりします。
つまり相手が口にしたポジティブな言葉は、「そう言わなければ」という頭が言わせているもので、本当に話したいことは別にあるわけです。こうした「語られていない物語」に気づかずに、ポジティブな言葉だけを鵜呑みにしていると、この人の真実の思いからはどんどん遠ざかることになってしまいます。
言葉だけでなく、自分の五感を総動員して相手の発しているものすべてを受け取ろうという聞き方が本当の「傾聴」です。そうした「語られていない物語」に気づいて聞けることは、相手にとってとても大きなギフトになります。
また、「語られていない物語」があることに、実は本人自身が気がついていないこともあります。それはしかし気がついていないだけで、なくなったわけではありません。ずっとそれが心のなかに残ったり、その上にいろんなものが堆積していったりします。そうなると本人の精神状態に良くない影響が生じがちなだけでなく、それが相手に投射されて相手との関係性の阻害要因になるということが起こり得ます。
いいところだけを見ようということがいわば偏りを招いており、フラットに相手と接することの妨げになり、それが相手からも反射してくる、という現象と言ってもいいかもしれません。
全てのことや思いを相手と共有するのは至難の業です。しかし、共有すべきこと、共有していないと違和感や不快感が残ることをどう扱うかは大事な問題です。それを「語らない」のは、語ることで相手がどんな反応をするかわからない、ひょっとしたら関係性が悪化するかもしれないという恐怖心があるからではないかと思いますが、その躊躇が逆にマイナスに働くとすれば、勇気が必要な場面と言えるでしょう。ベースの信頼関係の点検に加えて、相手の考え方や価値観への理解や尊重も必要です。そうしたことを一人で深めるのはなかなか難しく、まさしくコーチングの出番だろうと思います。コーチである私はそうした「語られていない物語」をお聞きする力をさらに磨いていきたいと切に思っております。
ここいち便りは教科書ではありません。みなさんがいろんなことを考えたり取り組んだり話し合ったりするヒントになればと思っております。リクエスト・異論・ご意見などなど大歓迎ですので、お気軽にお寄せいただければ誠に幸甚です。